共働き世帯が増え、育児や仕事に忙殺される現代。いまや家族が揃う「共食」は1割ほど。それにも関わらず、出来合いのお総菜ではなく、家庭の手作り料理を大切にしたいと考える人は多い。なぜ日本人はそこまで「家庭の味」にこだわるのか?そして、進化しつつある日本の食卓の“新常識”に迫った。
当今社会,出现越来越多夫妻双方都工作、在照顾孩子和工作间忙不过来的家庭。一家人坐在一起吃饭的人数也仅约1%。即便如此,大多数人认为亲手做的家庭料理,而不是已经做好的“蔬菜成品”,仍然是很重要的。为什么日本人会对“家的味道”如此执着?同时,不断进化中的日本餐桌上的“新常识”在朝着我们迫近。
調理時間と手間を徹底的に効率化した“簡単食”が食卓を席けんしている。共働き世帯を中心に「料理キット」の利用者は急激に増え、週に50万世帯が利用している。食材はすべてカットされ、メニューに応じて調味料も配合済み。1品10分程度で調理できる手軽さも魅力だ。こうした料理キットが人気の背景には、日本人の「家庭の味」への根強いこだわりがあるという。
彻底使料理时间和功夫更为效率化的“简单餐”正席卷我们的餐桌。以夫妻双方都工作的家庭为中心的“料理小盒”使用者不断激增,使用量达到每周50万家庭。其魅力在于所有的食材都已准备好,并根据菜单调好味。除此以外,10分钟就能做好1道菜的方便快捷也是其魅力之一。而其中的背景,在于日本人对“家的味道”有着极为深厚的执着。
番組の取材に応じてくれた田中早紀さん(仮名)もそのひとり。どんなに忙しくても家族には手作り料理をふるまいたい気持ちが強く、「買ったものをそのまま出すわけではないので、料理キットには罪悪感がない。味付けは自分でやっているので、これは手作り料理」と話す。
接受了节目组采访的田中早纪(假名)女士也是使用者之一。即便再忙也想亲手为家人做家庭料理,“由于并不是把买来的东西直接摆上餐桌,所以对料理小盒并没感到罪恶感。调味各般也是自己亲自来的,这也算是亲手做的菜。”田中女士接受采访时称。
共働き世帯が増えたいまでも、出来合いのお総菜に抵抗がある人は多い。民間会社の調査によると、30年前は8割近くが「市販のお総菜をそのまま食卓に出すことは気が引ける」と回答しており、現在でも約6割の人が同じように感じているという。
即使夫妻双方工作的家庭增多,还有很多人对成品料理表示抗拒。根据民办企业的调查,30年前接近8成的市民表示“对直接把从市场上买来的成品菜拿上饭桌感到抵触”,而现在也还有约6成市民有这样的感觉。
なぜ、日本人はこれほど「家庭の味」にこだわるようになったのか。日本で最も古い料理番組の一つ『きょうの料理』のレシピの変化から読み解きたい。番組が開始した1957年は、ちょうど高度経済成長のさなか。全国で核家族化が急速に進み、専業主婦も増える中、料理研究家の土井勝さんが打ち出した「おふくろの味」というキーワードが主婦たちの心をとらえ、それまで比較的シンプルだった食卓に「一汁三菜」「一汁四菜」という新しい常識が持ち込まれた。
为什么日本人会对“家的味道”如此执着?希望这能从日本最长寿料理节目之一的“今日料理”的菜谱变化中找到答案。该节目始于1957年,恰好处于日本高速成长期。全国小家庭化进程加速,家庭主妇激增。此时,料理研究家土井胜推出“妈妈的味道”一词,迅速占据主妇们的热潮。同时把“三菜一汤”、“四菜一汤”此等新常识带到我们的餐桌上。由此颠覆了以往较为清淡的饭餐。
その後、日本の経済成長と比例するかのように、食卓に並ぶ品数は1985年でピークとなり、「手間暇かけたメニューこそ、愛情たっぷりの家庭の味」という認識が浸透する。日本人の「家庭の味」へのこだわりには、こうした時代背景も関係しているのだ。
打那以后,如同日本当时的经济一般,餐桌上的菜品越来越多,1985年达到其顶峰。与此同时,“花时间炮制的美味家常菜,倾注了爱心的家的味道”的常识得到渗透。因此,日本人对家庭味道的执着,也与其所产生的时代背景有所联系。
共働きが増えたことで、料理を取り巻く環境も大きく変化した。なるべく簡単に、だけど手作りにはこだわりたいという人たちから、手間を省いた簡単な料理が好まれ、便利な調理器具を使って20分/10分/7分と短時間を強調したレシピが人気を集めている。しかし、それでも「おかずは3品ぐらいないといけないのではないか」という従来の家庭料理の体裁に縛られている人は多く、「今夜は何にしよう」と毎日の献立への悩みはつきない。
夫妻双方工作的家庭增多,料理菜式大环境也发生了巨大的变化。那些省时省力的简单料理受到又想料理尽量简单,但又执着于亲手做料理的人群的追捧,强调能用方便的烹调工具于20/10/7分钟内完成的菜谱则大受欢迎。然而,即便如此还是有很多人被从来“至少要有三道菜”家庭料理观念束缚着,每天都为菜式烦恼不断。
このような状況に料理家の土井善晴さんは、新しい家庭料理のスタイル「一汁一菜」を提唱している。一汁一菜とは、ごはん、みそ汁というシンプルな献立。みそ汁を具だくさんにすることで、おかずの役目も兼ねるという。しかし、本当にこれだけで栄養は足りるのだろうか?
面对这样的社会状况,料理家土井善晴则提倡“一菜一汤”的新式家庭料理形式。所谓的“一菜一汤”就是米饭、味增汤,如此简单的菜式。通过把味增汤的配料做丰富一些,同时起到下饭菜的作用。但是,这样简单的菜式就能满足我们每天的营养摄入了吗?
土井さんによると、「戦後、日本人の栄養が足りないということで、豊かな時代に向けて『一汁三菜』という家庭料理を作ろうと努力してきた。でも、もともとは『一汁一菜』こそが、和食の伝統的なスタイル」といい、具だくさんのみそ汁にすることで栄養価を高め、心もお腹も満たす食事になると説明する。「みそ汁というのは、濃くても薄くても、全部おいしく仕上がります。ダシをとらなくてもちゃんとうまみも出るし、一椀の中に主菜と副菜と汁物の要素が全部詰まっているんです」
根据土井料理家的话,由于战后日本人的营养摄入不足,在物产丰盛的年代大家都十分努力地每天做“三菜一汤”的家庭料理来弥补过去的不足。然而原本的“一菜一汤”就是我们日本料理的传统模式,把味增汤的配料做丰富,不仅营养丰富,而且心理身体上都能得到满足。“味增汤,不论浓淡,都能做的很好喝。即使不熬汤汁都能做出很好喝的味增汤。在小小一碗汤里面,主食附菜汤汁,集齐所需的所有要素。”土井说道。
土井さんが提唱する「一汁一菜」は、子育て世代や若い世代を中心に注目を集め、SNSでは、1万件を超える写真が投稿されている。そして、「一汁一菜」により、これまで負担になってきた「今夜は何にしよう」「おかずは3品ぐらいなくては」等の料理のストレスから解放された人は多い。
土井料理家所提倡的“一菜一汤”受到育儿家庭和年轻一族的瞩目,在SNS上,有超过1万件的照片投稿。同时,很多人也因 “一菜一汤”而从一直以来的“今晚吃什么”“至少要有三道菜”等的料理压力中得到解放。
「結婚して10年、料理することを重荷に感じるようになっていたが、品数や体裁など気にしなくてもいいという土井さんの言葉に勇気をもらった」(神奈川県 30代の女性)
“自结婚以来10年了,一直都觉得做饭是个重负。但是,‘不用过多在意数量和形态’,听土井料理家这样说,又重新获得了勇气。”(神奈川县30岁女性)
手づくり料理が理想とはいえ、女性たちに多大な負担をかけている。海外と比較しても、日本女性が「炊事にかける時間」は突出して長く、イギリスやオランダと比べて2倍近くに及ぶ。土井さんは「今の時代は、食べる人が主役になっている。しかし、実際は料理をつくる人が食文化を担ってきた。おかあさんやおばあちゃんが担ってきた食文化を守るためにも、家庭料理というものを、男性にも一緒に考えてもらいたい」と指摘する。
虽说亲手做菜是我们的理想,但是也给女性们带来很大的负担。与海外相比较,日本女性的“花在做饭上的时间”尤为突出且时间长,甚至比英国、荷兰的多出2倍的时间。土井料理家认为“当今时代,吃的人成为主角。但实际上,做的人才是承载着我们的食文化的主体。若是想守住妈妈、奶奶传承下来的食文化的话,希望男性同胞们也能就家庭料理,和我们一同探讨。”
SNSに投稿されたコメントの中には、「夫から『一汁一菜』の提案を受け、今では夫婦2人で手分けして料理を分担しています」という方がいた。
在SNS的投稿中,有这样的一条评论:“丈夫接受了‘一菜一汤’的提案,现在我们夫妇两人分工合作做饭。”
家庭の味を維持していくためにも、従来の品数や体裁にこだわらず、もっと自由に楽しく料理をすること。それには男性の支えが必要であることを、社会がもっと共有すべきなのかもしれない。
为了维持“家的味道”,我们无需局限于一直以来的数量和形态,而是更加自由的、开心的做料理。此举,可能也需要男性的支持,以及社会的分享。